声の大きさを「見える化」してみよう! 〜 STの視点から 〜

前回は、ST(言語聴覚士)についてご紹介しました。
今回の記事では、STの視点から、コミュニケーションの中でよくみられる困り事のひとつである「声の大きさ」についてご紹介します。
【 声の大きさ 】
・「大きな声、出し過ぎ!どうしてそんなに大きな声でおしゃべりするの?」
・「もう少し小さい声で話そうね」と何度伝えても、なかなか伝わらない…。
・「“小さい声”って、どうして分からないんだろう?」
など、「声の大きさ」を伝える場面での“困ったあるある”はたくさんあります。
そもそも、「声の大きさ」とは何でしょうか?
大きな声を出すことは、いけないことなのでしょうか?
例えば、発表する時には大きな声が必要ですし、夜間や周囲が静かな場所では小さい声が適しています。
つまり、声の大きさは「場面に応じて使い分けること」が大切だと言えます。
しかし、「周りをよく見て判断しようね」と伝えても、子どもたちにとってはとても難しいことです。
それが簡単にできれば、苦労はしませんよね。
さらに、声の大きさの感じ方は人それぞれ異なります。
そのため、子どもたちに“声の大小”を分かりやすく伝えることは、実はとても難しいのです。
そこで今回は、声の大きさを伝える際のちょっとしたポイントをご紹介します。
日常生活を一緒に過ごす中で、「こんな方法もあるんだな」と楽しみながら試してみてください♪

【 Point①:大小比較 】
「パパの靴は大きい」「ぼくの靴は小さい」など、実物を見て“大小”を比較することはできますか?
見えるもの(実物)の比較が難しい段階では、目に見えない“声”を比較することはさらに難しくなります。
また、他者の声は客観的に聞くことができますが、自分の声は「自分で出した声を覚えておく」必要があるため、難易度がぐっと上がります。
もし難しい場合は、まず「大きいもの・小さいものみ~つけた」ゲームをしてみましょう!
例えば…
- 服
- 靴
- 椅子
- コップ
- お茶碗
- 歯ブラシ
- 枕
- 布団
など、身近なものの中にも比較できるものがたくさんあります✨
さらに、
- 「長い/短い」
(タオル、靴下、ズボンやスカートの丈、電車、鉛筆、髪の毛 など) - 「高い/低い」
(背、木、山、水筒 など)
などへ発展させるのもおすすめです。
家族みんなで探してみると、楽しく取り組めるかもしれません♪

【 Point②:真似っこ 】
ここでいう“真似っこ”とは、「声の真似っこ」です。
大人が小さい声で話した時に、同じように小さい声を出すことはできますか?
真似っこが難しい段階では、「1の声はこんな声」「5の声はこんな声」と説明しても、なかなかイメージが伝わりません。
そんな時は、まず大人同士で真似っこしている様子を見てもらうのがおすすめです。
「こうやって真似するんだ」と客観的に理解しやすくなります。
また、子どもたちの声量に合わせて、大人がリアクションを変えてみるのも楽しい方法です。
例えば…
- 声が大きすぎる → 「うわ~!耳が痛い~!」と耳をふさぐ

- 声が小さすぎる → 「聞こえないよ~」と耳に手を当てる

- ちょうど良い声 → 笑顔で大きくリアクション!

こうしたやり取りを通して、相手の表情を見ることや、真似をする楽しさにも繋がっていきます。
【 応用編 】
スマートフォンやボイスレコーダーを使って、お互いの声を録音してみたり、音声検索を使って自分の声で検索してみたりするのもおすすめです。
録音した声を一緒に聞き返すことで、「どちらの声が大きいかな?」「聞きやすいのはどちらかな?」と客観的に確認することができます♪

また、Siriや音声検索、音声入力などの“音声認識機能”も、楽しみながら活用できます。
実は、声が大きすぎても小さすぎても、うまく認識してくれないことがあります。
大人がお手本を見せたり、検索した動画を一緒に見たりした後に、「同じように話してみてね♪」と促すことで、“場面に合った声の大きさ”を体感しやすくなります。
自分の声がうまく認識され、検索した動画が表示されると、子どもたちのテンションも上がりますね✨
※操作方法は秘密にしておいた方がいいかもしれません…😏

【 実践①:イラストを使って「見える化」してみよう! 】
大小比較や真似っこができるようになってきたら、次は“声の大きさの見える化”です。
人や動物のイラストに数字を組み合わせた「声のものさし」のような教材は、インターネットでも無料で見ることができます。
ただ、「どんなイラストがいいんだろう?」「どう使えば分かりやすいんだろう?」と悩みますよね。
そんな時は、ぜひ“好きなイラスト”を使ってみてください!
好きなキャラクターや動物だと、自然と興味や意欲が高まりやすくなります✨
色を変えたり、キャラクターの表情を変えたりしながら、オリジナル教材を作るのもおすすめです♪
子どもたち自身が表現したさまざまな表情をイラストに貼ると、それだけで楽しい教材になります。
「どのイラストがいいかな?」と子どもたち自身に選んでもらったり相談したりしながら、ベストなものを見つけて使ってみてください。

【 実践②:イラストと声の大きさを一致させよう! 】
まずは、大人がイラストを見せながら、「5の声はこんな声」「1の声はこんな声」と実際に声を出してみます。
客観的に変化を見聞きすることが大切です。
その後、子どもたちにも真似っこしてもらい、“イラスト”と“自分の声の大きさ”を一致させていきます。
すると、「もう少し小さい声でね」ということばだけよりも、イメージが伝わりやすくなります。

【 実践③:日常生活の中で使ってみよう! 】
実際におしゃべりしている場面で、「今の声は何番かな?」「今の状況だと、何番くらいの声が合っているかな?」とイラストを使いながら一緒に考えてみましょう。
場面によって適した声の大きさは異なるため、最初は子どもたちが戸惑うこともあります。
たとえば、「前はこの大きさで『3の声だね』って褒められたのに、今は『5の声だね』って注意された。なんで!?」と疑問に感じることもあるでしょう。
これは、場面によって適切な声の大きさが変わることを学ぶ大切な機会でもあります。
こうした場面は、日常の中で頻繁に生じるからこそ、実際に経験を積むことが必要不可欠であると考えています。
そこで大切にしたいことが「今は静かな場所だから小さな声がいいね」「外だから少し大きめの声でも大丈夫だよ」といったように、理由を明確にして伝えることです。
実際の経験を積み重ねながら、その都度理由を丁寧に伝えることで、子どもたちの気づきや理解に繋がっていきます。
イラストを見ながら声の大きさを調整できるようになると、気持ちが高ぶっている場面でも、イラストを提示することで、自分の声の大きさに気づくきっかけになります。
また、イラストを使って安定して取り組めるようになったら、次はイラストなしでもチャレンジしてみてください!
「○○の声でお話してみようね」といった声かけだけで、声の大きさを調整する練習です。
ことばかけだけで声の大きさを調整できるようになると、イラストを持ち歩く必要がなくなり、できたときには一緒に喜ぶことができます。
ことばかけだけで調整できるようになったら、儲けもんですね~😊
【 まとめ 】
声の大きさをコントロールすることは、とても難しいことです。
イラストと声を一致させることができても、すぐに“場面に合った声量”へ結びつくとは限りません。
それでも、子どもたちと一緒に試行錯誤する中で、コミュニケーションが生まれ、新しい気づきもたくさん生まれます。
また、イラストの有無に関わらず、「今、伝えても大丈夫かな?」「この方法なら伝わるかな?」と、お互いに相手の様子を伺い、心に余裕を持って関わることが大切です。
ゲームやクイズのような“遊びの延長”として取り組むことで、声量調整も楽しく学ぶことができます♪
ぜひ、楽しみながら笑顔で取り組んでみてくださいね(*^^*)
執筆者:障害児入所施設おかば学園 ST 森本 恵梨奈

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